リレーインタビュー

第1回 JUAS専務理事インタビュー

絆・多様性・チャレンジを大切に
~日本の未来を創り出す仲間たちの場として

三宅 晃

一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 専務理事

コロナ禍の真っただ中である2021年6月にJUAS専務理事に就任した三宅 晃。 もともとは参加者だった立場から「中の人」となっての想い、今後の活動展望について聞いた。

IT部門が嫌で仕方がなかった私が、今人生最後の日にしたいこと

●三宅さんとJUASのかかわりは?
――もともとは会員企業の参加者でした。IMCJ(イノベーション経営カレッジ)に参加したのが初めての関わりです。その後もフォーラム、IMCJや中堅向け研修のゲスト講師など、立場や役職が変わってもJUASに関わってきました。仕事じゃありませんが(笑)、IMCJのOBによるゴルフコンペを自主開催したこともあります。
当時感じていたJUASの一番の魅力は、メンバー同士の信頼関係です。JUASというコミュニティに参加してみると、会社は違えどメンバーの悩みは共通だったりします。JUASの中ではお互いを信頼した上で、外に出すのが微妙な話題も含めて、突っ込んだ情報交換ができる。その結果、自分の会社のことが客観的に分かるし、進んでいる部分と課題が浮き彫りになる。「ああ、そんなアプローチがあるのか」と気づきがあったら、自社で試したこともありました。会社を超えて盟友が生まれるという感覚ですね。

●外からみるのと、中に入ってみて、違いはありましたか?
――すべての事業が会員の皆様に支えられて成り立っていることを、中に入って改めてひしひしと感じます。あとはこれだけの事業を、事務局20名弱でやりきるのは本当に大変。けれど、皆やりがいを持ってやってくれていますね。

●6月に専務理事に就任しましたが、その想いをお聞かせください。
――手前みそですが、私はJUASの活動が本当に意義深いものだと思っているし、活動に参加している皆様やJUASで働いている人達が大好きなんです。
個人的な話をすると、新人でまさかのIT部門に配属されて、嫌で嫌で仕方がなかった(笑)。毎年異動希望を出して、何とかIT部門脱出を試みましたが、結局最後までIT部門。でも今ではずっとIT部門で仕事ができて良かったと、心から思っています。大勢のステークホルダーと一丸となって、同じゴールに向かっていくという、IT部門の仕事が自分には合っていました。

会員として活動に参加していた当時、JUASのメンバーは会社を超えた盟友でしたが、今は専務理事として、JUASの活動やそれに関わるすべての人達のために、自分ができることは何でもしたいと心から思っています。
スティーブ・ジョブスの講演の中で、「もし今日が人生最後の日だとしたら、私は今日やろうとしたことを本当にやりたいだろうか」と言う有名なセリフがあります。以前は「最後の日に会社に行くわけないだろ」と思っていたけれど(笑)、今ならJUASに行くかもしれない、正直そんな気持ちですね。

JUASで大切にしたいこと 〜 絆・多様性・チャレンジ

●コロナ禍におけるJUASの役割、今後の活動予定をお聞かせください。
――活動が制約される中で、こういう時代だからこそ大切にすべきことは次の3つだと思っています。
まず1つ目は、「ステークホルダーの皆様同士の絆」です。
リアルに会えない状態が1年以上続き、会社を超えた新しい人脈を創り出すのが難しくなっています。改めて、会員企業の皆様同士、そして皆様とJUASの繋がり=絆こそ財産なのだと痛感しています。色々な制約がある中でも、絆を深めるためにどうすれば良いか、常に意識していきたいと考えています。

――2つ目は「参加者や活動の多様性」です。
変化の激しい時代に新しい価値を生み出し続けるためには、JUASに参加するメンバーや活動内容に、多様性があるほど良いと思っています。多様性の中から化学反応が起こって新しい価値が生まれるし、皆様がJUAS活動に参加する意味も多様性の中にあるのだと感じています。

――3つ目は「JUAS自身の環境変化への対応・チャレンジ」です。
過去の成功体験にとらわれずに、新しいことにどんどんチャレンジしていきます。失敗もあるかもしれませんが、会員の皆様には温かく見守っていただけたらありがたいです。

●2022年度は、創立30周年です。何か考えていることはありますか。
――2022年はJUASの新しい船出の年にしたいですね。色々な活動がコロナ以前の形に完全に戻ることはないはずで、新しい活動形態をスタートする年になると考えています。
「30周年記念パーティー」みたいなものが開催できるくらい、コロナも落ち着いているといいですね。

●これからJUASをどうしていきたいですか。10年後どうなっていたいですか。
――これまでもこれからも、やはり一番大切なのは、ステークホルダーの皆様にJUASが必要と思われ続けることに尽きます。そのために皆様へ価値を提供し続けていきたい。日本の一部上場企業は約2200社、経団連の加盟企業数1500社、それに比べJUASのAB会員企業数は420社とまだまだ少ない。もっと多くの企業に参加いただけるようになりたいですね。
あと経営的な立場から言うと、当たり前ですがJUASの歴史を終わらせないことです。協会なんて安泰だろうと思う方もいるかもしれませんが、JUASの総収入のうち会費の占める割合は1割程度、9割は自主事業で今の活動を維持しています。先行き不透明な中で、事業存続のためにシビアな判断をしなければならないこともあると思っています。

DXの本質、経営トップへいかに情報を届けるか

●DXについてどう考えていますか。
――課題大国ニッポンの様々な社会課題を解決して、素晴らしい未来を迎えるためには、DXしか手段はないと思っています。DXという単語自体は若干バズワード化していますが、デジタルの力を使って今まで不可能だったことを可能にする、そしてその力を社会課題の解決に向けて使う、というDXの本質は今後も変わらないと考えています。

●DXについてJUASで何ができるでしょうか。
――DXがオープンイノベーションから生み出されるものであるとすれば、オープンな場を提供し、エコシステムの形成に繋げていくのは、JUASの得意とするところでもあり、JUASとDXの相性は非常に良いと思っています。今後もセミナー、フォーラム、研究会、アカデミーなど色々な場で、DXを様々な角度から取り上げて、人材育成も含めて、会員企業の皆様のDX推進の一助になりたいと思っています。

――1つだけ悩んでいるのが、どうしたら経営トップの方々にも、JUASの様々な活動や情報をお伝えできるかということ。DXは経営戦略そのものですから、経営トップの方にも情報をお届けして、活用していただくのがJUASの務めだと思っています。
例えば先日のJUASスクエアの基調対談は、経営トップである大林組・大林会長と、日本のDXを牽引している慶應義塾大学・村井教授の、本音の意見交換でした。この対談は、DXを推進する経営トップの方にぜひご覧いただきたい内容です。JUASの活動に参加する皆様は、活動成果を自社に持ち帰り、他部門や、自社の経営トップにもお伝えいただけたらと思います。

JUASに関わる全ての方が、ITで日本の未来を創り出す仲間

●会員、社会に伝えたいことはありますか。
――先ほども触れましたが、「一緒に働くステークホルダーの皆様を大切にする」ことを、大事にしてきました。私が好きな話に、NASAの掃除人の話があります。アメリカのジョンソン大統領がNASAを訪問したとき、前日の台風の跡を、翌朝にはきれいに片付けていた掃除人に、ねぎらいの言葉をかけた。その掃除人は「私は人類が月に行くお手伝いをしていますから、このぐらい当然です」と。NASAの中では、どの職にあっても、皆同じ目標に向かう仲間だという意識が、徹底していたのだろうと思います。
システム開発に関わる仕事は、ビジネスサイド、発注者、受注者その他大勢のステークホルダーが存在し、その間には上下関係や力関係が発生することもある。しかしステークホルダーは皆同じ目標に向かう仲間であるということを、IT部門で働くすべての人に忘れないでいてもらいたいですね。

――ITは課題大国ニッポンを救う切り札だと思っています。その意味で、会員の方をはじめJUAS関係者すべてが同じ目標に向かう仲間だと、私は思っています。また勝手で申し訳ないのですが(笑)。
JUASスクエアや研修、フォーラムなどで会員の皆様に登壇いただいたり、企業IT動向調査の執筆をお願いしたり、皆様お忙しい中協力いただき、心から感謝しています。これも会員企業の皆様が、ITで日本の明るい未来を創るという目標に向かっていく仲間だと、考えてくれているからだと思っています。
JUASが皆様に何かお願いをしたときは、背景にこんな思いがあると感じていただけたらありがたいです。そしてもし皆様がJUASに頼りたいことがあったら遠慮なく言っていただきたい。できるかどうかにかかわらず、とにかく全力で対応します。
これからも皆様よろしくお願いいたします。

※ 掲載内容は2021年11月取材時のものです。

<JUASとは>
・1962年設立の「日本データ・プロセシング協会」が前身。
 1992年に組織を拡充・改組し、今の「日本情報システム・ユーザー協会」となる。
・主な活動:フォーラム、研究会、セミナー、イノベーション経営カレッジ、企業IT動向調査、JUASスクエア、プライバシーマーク審査

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