調査部会では調査結果をさらに深く分析することに取り組み始めており、複数回に分けて分析結果を公開してまいります。
2025年度 第2弾として、「開発QCDとIT組織機能の充足度の関係」をご紹介いたします。
1. はじめに
「企業IT動向調査報告書2026」の第7章「システム開発」によれば、システム開発プロジェクトの工期、予算、品質は、規模が大きくなるほど計画未達となるケースが多い。特に100~500人月規模のシステム開発プロジェクトでは、計画遵守状況が年々悪化傾向にある(※1)。
本稿では、遵守状況が芳しくない大規模プロジェクトにおいて、「第6章IT組織・人材」にて調査したシステム開発に関わるIT部門の機能・能力の充足度(※2)により、それぞれの遵守状況がどの程度の差異があるかを分析することを目的とする。
2. 分析対象
本レポートでは、「企業IT動向調査報告書2026」の工期、予算、品質の遵守状況(100~500人月と500人月以上のプロジェクトで、対象とする開発プロジェクトが存在するデータのみを分析対象とする)、およびシステム開発と関係する4つのIT組織の機能・能力の関係について分析を行う。
質問項目は以下の通りである。
Q7_1最近の貴社のシステム開発における、工期・予算・品質の状況についてお聞きします。「工期」について、プロジェクトの規模ごとにあてはまるものをお選びください。
Q7_2「予算」について、プロジェクトの規模ごとにあてはまるものをお選びください。
Q7_3「品質」について、プロジェクトの規模ごとにあてはまるものをお選びください。
Q6_4 IT部門・情報子会社の機能・能力についてお聞きします。IT部門・情報子会社の個々の機能・能力について、現在の充足状況をそれぞれお選びください。
調査対象となる項目:
6. プロジェクト管理(計画、およびコスト・納期・品質の管理)(以下「PM能力」)
7. 上流工程設計能力(業務分析・システム要件定義)(以下「上流能力」)
8. アプリケーション設計・開発(ウォーターフォール型)(以下「開発能力」)
10. ITアーキテクチャ標準化、IT基盤整備(以下「ITA能力」)
3. 工期、予算、品質の相関関係
まず図1に、100~500人月、および500人月以上の開発プロジェクトの工期、予算、品質の遵守状況を示す。工期、予算、品質の順に遵守できなかった企業の割合が高くなっていることがわかる(図1の赤太枠線部)。
図1 工期、予算、品質の予定遵守状況

続いて、工期、予算、品質の相互の関連性を確認するために、表1に100~500人月の開発プロジェクト、表2に500人月以上の開発プロジェクトの工期、予算、品質、それぞれの相関係数を示す(※3)。
表1 100~500人月開発プロジェクトにおける工期、予算、品質の相関関係(n=320)

表2 500人月以上開発プロジェクトにおける工期、予算、品質の相関関係(N=229)

表1、表2より、工期、予算、品質には相関関係があることがわかる。その中でも工期と予算の相関関係が強い。
実際、それぞれ予定どおり進まなかった理由として、工期(図表7-1-8より)が「計画時の考慮不足(52.5%)」、「想定以上の現行業務・システムの複雑さ(48.8%)」、「社員のスキル不足(46.5%)」、また予算(図表7-1-7より)は「想定以上の現行業務・システムの複雑さ(51.4%)」、「計画時の考慮不足(51.0%)」、「仕様変更の多発(48.6%)」が理由として述べられ、主に上流工程に起因する要因が指摘されているのに対し、品質(図表7-1-6より)については「ベンダーのスキル不足(59.9%)」、「計画時の考慮不足(48.8%)」、「想定以上の現行業務・システムの複雑さ(48.8%)」と設計・開発工程の要因が加わる。
4. IT組織の機能・能力の充足度別工期、予算、品質の遵守状況
続いて、IT組織の機能・能力の充足・不足に分けて、工期、予算、品質の遵守状況を、100~500人月の開発プロジェクトについては図2~図4、500人月以上の開発プロジェクトについては図5~図7に示す。
なお、図中の「全体」には、一部の機能・能力で「IT組織の機能・能力ではない」の回答を含めた全数の分布を示している。また、グラフの右に、機能・能力の充足状況の違いによる、遵守できていない企業の割合(赤枠線部)のポイント差を示している(赤:20ポイント以上の差、青:15ポイント以上の差)。
《100~500人月の開発プロジェクト》
図2 IT組織の機能・能力充足度別 工期の遵守状況(100-500人月)

図3 IT組織の機能・能力充足度別 予算の遵守状況(100-500人月)

図4 IT組織の機能・能力充足度別 品質の遵守状況(100-500人月)

《500人月以上の開発プロジェクト》
図5 IT組織の機能・能力充足度別 工期の遵守状況(500人月以上)

図6 IT組織の機能・能力充足度別 予算の遵守状況(500人月以上)

図7 IT組織の機能・能力充足度別 品質の遵守状況(500人月以上)

図2~図7のグラフから以下のことが確認できる。
まず、100~500人月のシステム開発プロジェクトのほうが、500人月以上のシステム開発プロジェクトより、IT組織の機能・能力の充足度の影響が大きいことがわかる。500人月以上のプロジェクトになると開発チームの規模も大きくなるため、チームで能力が平準化されている可能性がある。もしくは、500人月以上のプロジェクトは規模の大きな会社のプロジェクトとなるため、IT組織の能力面で優位にある可能性がある。
100~500人月のシステム開発プロジェクトと500人月以上のシステム開発プロジェクトに共通して、工期・予算・品質とも、PM能力、上流能力のIT組織の機能・能力の充足度が影響を与えていることがわかる。その傾向は、品質より工期・予算に対する影響のほうが大きい。規模の大きいプロジェクトほど予定のQCDを遵守することが難しいため、システム開発体制をしっかり構築したうえで推進されているのではないかと考えられる。
一方、開発能力についてはIT組織外の外部委託(アウトソース)を活用している企業が多いため、IT組織の機能・能力の充足度の影響が少ないと考えられる。本傾向は開発能力ほど顕著ではないが、ITA能力でも確認できる。実際、本誌の「図表7-1-6 システム開発の品質が予定どおりにならなかった要因(複数回答)」からも、品質について「ベンダーのスキル不足」が、品質を予定どおり確保できなかった要因として最も多く挙げられていることとも一致する。
5. まとめ
以上をまとめると、以下の結論を得ることができる。
① 工期・予算・品質間には相関関係があるが、工期・予算間の方が相関関係の強い。
② PM能力、上流能力のIT組織の機能・能力充足状況は、工期・予算・品質に影響を与えるが、品質より工期・予算への影響が大きい。
③ 100~500人月のシステム開発プロジェクトのほうが、500人月以上のシステム開発プロジェクトより、IT組織の機能・能力充足度の影響が大きい。
④ 多くの会社が開発能力を外部委託(アウトソース)している傾向が強いため、IT組織の機能・能力の充足度の影響は小さい。
(※1)詳細は、「図表7-1-1 プロジェクト規模別・年度別 システム開発の品質遵守状況」、「図表7-1-2 プロジェクト規模別・年度別 システム開発の予算遵守状況」、「図表7-1-3 プロジェクト規模別・年度別 システム開発の工期遵守状況」を参照。
(※2)「図表6-3-3 IT組織の機能・能力の充足状況」参照。
(※3)相関関係を分析するにあたり、空白データと「該当プロジェクトなし」のデータを除き、予定より良好:4、予定通り:3、ある程度は予定通り:2、予定より悪化:1として処理を行った。
企業IT動向調査に関するお問い合わせ先
JUAS 企業IT動向調査担当:(itdoukou@juas.or.jp)
<参考>
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